寝室が倉庫になってしまっている都合上、リビングに布団を敷いて寝ていた僕は携帯電話のアラームで目を覚ましました。AM5:00こんな時間に起きるなんてかなり久しぶりです。吹抜け上部の窓には光を遮るものが無く、まだ太陽は昇っていないのに室内も少しだけ明るくなっています。今日の千葉県の日の出時刻は午前5時24分。妙典周辺だと10分、いや20分位遅いのかもしれません。
そう、今日の早起きの予定とはこの家で迎える最初の日の出を家族揃って見ちゃおうぜ計画だったのです!
しかも息子は太陽が昇る瞬間を未だ見た事がありません。誕生日と自分の部屋とのトリプルパンチにきっと彼はメロメロ、小踊りしながら喜んでくれるでしょう。昨夜は引越し兼、誕生祝いで結構呑んでしまい、得意技の2度寝がとても心配でしたがちゃんと一発目で起きました。僕だってやるときゃやります!ところが・・・
前日の疲れをモノともせず急いで3階に上がり、バルコニーに飛び出した僕は目の前の光景に目を疑いました。
「なっ、なにぃ?!」
稀に見る見事な曇りです!
東の空どころか西も南もそこら中が分厚い雲に覆われていてまったく話になりません。
全然ダメです。アウトです。天気予報では晴れになっていたんですけど…
この計画は今から約4ヶ月前の棟上げの日、初めて3階からの景色を見た時から決めていました。そう、缶コーヒーを落としてしまったあの日です。江戸川の向こうに見える東の方角には高い建物は何もなく「太陽はあの辺から昇るのかな?こりゃキレイだろーなぁ」と
今日までずーーーーーっと暖めていた計画だったのに・・・
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はーぁ、所詮人生なんてこんなもんですわ。
普段あまり天気は気にしてませんが昔から何かを計画したりすると、肝心な日は大抵悪天候に見舞われてしまいます。今年もお墓参りに行けば雨だし、夏休みは毎日雨だったし、月に一度の洗車をすれば必ず3日以内に雨が降るし…
そんな僕が何もかも思い通りになんていく訳ないんです。いやー調子に乗り自分の運というものを甘く見てました (+_+) ともかくコレでは日の出なんて見れっこありません。今日みんなを起すのは僕の役目、前日の疲れも残っているはずなので、ゆっくり寝かせておいてあげようと思います。
ホントなら今頃は3人でキレイな朝焼けを見つめ感動を分け合っている頃でした・・・眠い目を擦りバルコニーに出る3人を、朝一番の少しだけひんやりした空気が迎えてくれます。まだ汚れていない空気を思い切り吸い込むと一気に目が覚めてきました。
静かに陽の昇る方角を見つめていると一瞬の小さな光の後みるみるうちに姿を現す太陽。辺りが明るくなってくるにつれ、どこに隠れていたのか不思議と鳥達のさえずりも増えてきました。僕は息子にこんな自然の優しさと力強さを教えてあげたかったのかもしれません。感動しやすい息子は「凄いねお父さんっ。今日の太陽は一生忘れないよ!いや、忘れられないよっ!」と僕に跳び付いてきた事でしょう。そんな僕らを笑顔で見つめる妻は「あなたコーヒー入れてくるわね。ここで飲みましょう 」
いつになく優しい妻の口調に、息子も不思議そうに
「あなたってお父さんの事?」
「まあ、この子ったら! 」
「えへへっ」
「うふふふっ 」
失礼、ちょっと気持ち悪くなってきました・・・
完璧にイジけてる僕はもう一度寝ようとしましたが、あまりの出来事にすっかり目が冴えてしまい眠れそうにありません。曇っているとはいえこの家での最初の朝、せっかく早起きしたんだし少し景色でも眺めてみようと、冷蔵庫から缶コーヒーを取りまた3階に上がってみました。今日の為に用意しておいたアウトドア用のテーブルセットに腰掛け、ぼんやり河の流れをみていると先程のショックも少し落ち着いてきます。さっきよりいくらか明るくなってきた空には相変わらず分厚い雲が漂っています。恨めしげに東の空を見ていると、ほんの少しだけ雲の切れ間がある事に気付きました。「あの隙間が開いているうちに陽が昇ってくれないかな・・・」するとその時です、雲の切れ間から突然太陽が顔を出しました。目線より少し上で輝く太陽と、水面に反射する沢山の光の見事さに見とれていると、周りの雑音さえ聞こえなくなってくる気がします。一瞬2人を起こそうかと迷いましたが、今からでは間に合いそうにありません。またすぐあの雲の陰に隠れてしまうでしょう。考えてみればこの計画も僕が勝手に考えた事、疲れている2人にとって今は夢の中にいる方がよっぽど幸せなのかもしれません。太陽の昇る速度はあまりにも速く、そんな事を考えているうちにすっかり雲の向こうに見えなくなってしまいました・・・
結局1人で迎える事になってしまったこの家で最初の日の出。曇り空の中のほんの一瞬でしたが、今日の日の出は今までに見た中で間違いなく一番キレイな夜明けでした。 |
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昨夜は3時間位しか寝ていません。コーヒーを飲んでいるとはいえ30分近くもぼんやりしていると、さすがに眠くなってきました。今日は引越しの後片付けや買い物などやらなくてはいけない事が沢山ありとても忙しくなるでしょう。会社には前もって休みもとってあります。あと2時間くらいなら寝れそうなので僕はもう一度布団に入る事にしました。
息子の大声で起こされたのはAM8:30
「何でまだ寝てんの!もう太陽昇っちゃってるよー 」
「バカ、違うよ。起きたけど曇りだったんだよ! 」
寝ぼけながらも反撃する僕に妻と息子は
「うそだー」
「どうせまた2度寝したんでしょ?」
「だから早く寝なって言ったのにー!」
相変わらず父の威厳なんてものはまるで無いT家の新しい朝がそこにありました。
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完 |
35話から、T主任邸の内観・外観写真などを総集編として更新する予定です。
どうぞお楽しみに!
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